2015年09月02日

英文法に見るテンス解釈(5)

  『謎解きの英文法 ― 時の表現』久野すすむ・高見健一 (著)[くろしお出版 (2013/8/10)]

   ●動詞の現在形が現在時と未来時を表す(3)

 前回の、

 一方、動作動詞が現在時を指せるのは、次に示すように、習慣的動作を表す場合に限られます。(【付記2】参照) 

  私は毎朝ジョギングする。 [現在時]

 の【付記2】を見てみましょう。次の通りです。 

 「私は来年から毎朝ジョギングする。」は、未来時を指しますから、(10)の「私は毎朝ジョギングする」には、実は、現在時と未来時の両方の解釈があります。ただ、(10)がこのような文脈がなければ、現在時の解釈が圧倒的に強くなります。                                                   

  ここでも、話者の認識を無視し、文に示された「する」の解釈の問題にしてしまい、「圧倒的に強くなります」というのでは文脈とは何かが理解されていません。文を支えるのは話者の認識であり、これが文脈に示されているのですから、「圧倒的に強く」なるか否かの解釈の問題ではなく、話者がどのような認識を表現しているのかを追体験するのが読解です。 

 私は来年から毎朝ジョギングする。 

では、話者は「来年から」で観念的に来年に移動し、これに対峙することにより現在として、「毎朝ジョギングする」 と表現し、これが固い決意で確実な事実であるため、現在には戻らずに文を終えています。さらに、強調する場合は、 

 私は来年から毎朝ジョギングするつもりだ。

  私は来年から毎朝ジョギングするのだ。 

となります。ここから現在に戻り、未来の表現であることを確認した場合には。

  私は来年から毎朝ジョギングするだろう。 

 私は来年から毎朝ジョギングしよ 

と断定の助動詞「だ」の未然形+未来推量の助動詞「う」や未来推量に意志の加わった「う」が連加されます。

 このように、話者の認識と観念的な動きの表現としての時制を捉えることができずに、単に語の形と対象を直結する言語実体観では時制の本質を正しく理解できないことになります。■

  
Posted by mc1521 at 13:08Comments(0)TrackBack(0)文法