2017年04月22日

形容動詞という誤り (2)

                     権 善和 「日本語形容動詞の研究」
                      松本靖代 「日本語教育における形容動詞の扱い―国文法との比較を通して―」

 2) 形容動詞論の現状
 形容動詞の名称と品詞の扱いの来歴が次に記されていますので引用します。
 「形容動詞」という名称を初めて用いたのは、大槻文彦(1897)であるが、これは日本語の形容詞が、英語のadjectiveの訳語としての形容詞との混乱を避ける目的で提案したものである。現代と同じ意味で「形容動詞」という名称を最初に使ったのは芳賀矢一(1904)である。
吉岡郷甫(1912)は形容動詞を口語についても適用しているが、形容動詞が一品詞として定着されたのは、吉沢義則(1932)と橋本進吉(1935)による。
 反面、形容動詞を認めない説も現れている。
 佐久間鼎(1940)は形容詞と形容動詞を一括して「性状語」と呼んだ。
 否定論の代表的な学者である時枝誠記(1950)は、形容動詞を全面的に否定して語幹を体言とし、語尾を断定の助動詞とすべきであると主張した。
 そして、「橋本進吉(1935)の以前の研究ではカリ活用を形容動詞と認める見解もあるが、現在の研究では、カリ活用は形容詞の範疇とし、ナリ活用とタリ活用とを、形容動詞の範疇とするのが一般的である。」と現況が述べられています。これに沿って、教育が行われ第二言語の学習者のみならず、国語教育でも混迷を招いているのは、たとえばYahoo! JAPAN知恵袋やOKWAVE Q&Aの国語、日本語の質問等をみると、形容動詞の定義や、形容詞と副詞との相違、名詞との関係等多くの質問が毎回出されています。
 第二言語の学習者に対する日本語教育については、[松本稿:扱い]で次のように記しています。
 日本語教育では、国文法における形容動詞を、「ナ形容詞」と呼び「形容詞」の下位分類の一つとして学ぶ方法と、「名詞的形容詞」と呼び「名詞+だ」と同じくくりで学習する方法の2種類が一般的である。
 このように、形容動詞という分類を形容詞の下位区分とし、「ナ形容詞」とするのは単に名称の問題で、「健康な体」「彼は健康だ」の「な」「だ」を活用とし、「健康な」「健康だ」を一単語、一品詞とする点で「形容動詞」論の一変形でしかありません。
 [松本稿:扱い]では現状が前提され論じられているため、形容動詞否定論には触れられていませんが、[権善和稿:研究]では「4.2. 否定論」で、松下大三郎、時枝誠記、水谷静夫の否定論に言及されています。しかし、第一章 序論で、「形容動詞の認定論と否定論については、第2章で詳しく言及するが、これは研究史を探る程度の水準にとどめておき、本論文では、この問題を飛び越して、運用上の特徴を中心に考察を進めたい。」と、この問題を飛び越してしまいます。形容動詞を論じて、この問題を飛び越したのでは本質的な議論など出来ないのであり、教育方法もまた明確にはできません。この点で[松本稿:扱い]も[権善和稿:研究]も共に、その限界が明かといえます。

 残念ながら、この点を明確にした論文は現状では見当たらず、唯一明確にしているのは三浦つとむの言語過程説による解明です。
 これが、現在の日本語文法、文法教育の現状ですが、次に具体的な内容をみることにします。■

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